若林氏の講演から幾日か経ちました。
いま、素晴らしいエチオピアのコーヒーを口にしながら胸に去来するのは、
スペシャルティーコーヒーのこれから。
私たち消費者のもつカップの中の「美味しいコーヒー」のその先、
産地の人々が暮らし、買い手と作り手の繋がりが明らかになることには、
目を背けてしまいがちな先行きや困難な状況も広がっています。
1990年創業の堀口珈琲は、スペシャルティーコーヒーという生豆の最高品質と、
農家さんとのパートナーシップ契約という持続的な繋がりを開拓した、先駆的な存在です。
今回のセミナーでは、各地域で採れる素晴らしい風味特性のポテンシャルの一方で、
作り手への交渉や品質向上の難しさが
中南米に見られる農園型コーヒー生産とどのように違うのか。
コーヒーの果実の生育や収穫後の選別、乾燥処理の行程で
液体の風味を阻害してしまう要因がどれほど混入しやすいか。
産地を巡り、コーヒーの背景を知る生豆のプロフェッショナルならではの立ち位置と言葉遣いに、
参加者の方も普段よりもっと前のめりな姿勢で、驚きの声を多数いただきました。
雑味の無いクリーンカップに、表象としての産地個性と作り手の仕事。
たとえばフランスのボルドーワインのように、たとえば佐賀県の唐津焼のように、
若林氏はひとつひとつの作品として、スペシャルティーコーヒーを語る口調が一貫しています。
ロースター、バリスタ、飲み手のすべての人へ。
消費国のリテラシーとスペシャルティーコーヒーのもっと深い楽しみ方を、
また次回も博覧強記の辣腕を振るっていただきたいと思います。
次のセミナーもお楽しみに。
ご来場の皆様、ありがとうございました。